夜空の月を見上げるとき、
ふと、この歌が頭に浮かびます。
「天の海に 雲の波立ち月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」
(あめのみに くものなみたち つきのふね ほしのはやしに こぎかくるみゆ)
柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)(飛鳥時代の歌人)の歌で、日本最古の歌集「万葉集」に収められている歌です。
現代語訳は、
"天の海には雲の波が立ち、月の船が星の林の中に漕ぎいでて、
隠れて行くのが見える"
人麻呂は、夜空のようすを、
天を海に、雲を波に、星を林に、
そして夜空を渡る月を舟に見立てる巧みな表現技法で歌っています。
また、一年ぶりに再会できた牽牛(彦星)と織女(織り姫)の逢瀬の舟が、
星々の陰に隠れ進んで行く、という解釈もあります。
千年以上も昔、同じ夜空の月を見上げ、
こんなにも格調高く、
ロマンティックな歌を詠んだ歌人がいたことに心震えます。
さて、
今夜、5/26は、月が地球に最も近づいて最大級に見えるスーパームーン、
そして皆既月食。
皆既月食とは、太陽と地球と月が一直線に並び、満月が地球の影にすっぽり覆われる現象です。
この皆既月食の間の月は、見えなくなるのではなく、太陽光の中の赤い光が地球の大気で屈折して月を照らすため、赤みを帯びた神秘的な満月が見られます。
日本でスーパームーンの皆既月食を見られるのは1997年9月以来、24年ぶり。
部屋の明かりを消して、夜空を眺めながら遠く万葉の昔に想いをはせてみませんか。